さまざまな海藻が群生する「藻場」。海の生態系を支えるとともに、二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン」としての役割も果たしています。しかし近年、温暖化による高水温が影響し、藻場が消失する「磯焼け」が問題となっています。
こうした中、福井県海洋資源研究センターでは、「藻場」の造成に適したエリアを初めて地図にまとめ、豊かな海を守るための活動をスタートさせました。
6月上旬、センターの主任研究員・仲野大地さんは、日本海に面した福井県坂井市三国町を訪れました。海に潜り、「藻場」の現地調査を行います。
海藻をエサやすみかにする生き物は多く、豊かな「藻場」は海の生態系保全に重要な役割を果たしていますが、今年は例年と比べ海藻が少なかったようです。仲野さんは「水温上昇が例年より早く、海藻も早い時期から減少したのかもしれない」と指摘します。
日本海沿岸の「磯焼け」は南北から進行しており、中央に位置する北陸の沿岸では、豊かな「藻場」がまだ残っています。ただ、福井県内でも、一部のエリアで「磯焼け」の初期症状が出始めています。
こうした中、子供たちに海藻への理解を深めてもらおうと、福井県若狭町で体験講座が開かれました。
講師を務めた海藻の専門家・東京海洋大学の神谷充伸教授は、暖流と寒流がぶつかる日本近海では海藻の種類が豊富なことや、海の温暖化が海藻の生育に悪影響を与えていることなどを紹介しました。
参加した親子連れらは、海藻の採集にも挑戦。講座を通じて「海藻にはたくさんの種類があると分かった」「海藻がいっぱい育つきれいな海を守っていきたい」などと話していました。
「海藻」は、身近な食の分野でも課題があるようです。
福井県若狭町で漁家民宿を経営する藤原雅司さんは、宿泊客に季節の海藻料理を提供しています。料理に使うモズクやワカメは、素潜り漁で自らとった新鮮なもの。宿泊客からの評判も上々です。
ただ、今後も多くの人に海藻料理を味わってもらう上で、漁師の減少が課題になっていると指摘。解決策の一つとして、魚価の向上をあげています。
県海洋資源研究センターは、効果的な「藻場」の保全活動につなげるため、▼水深が10メートルより浅い▼近くに藻場があり海藻の種が広がりやすいーなど、藻場の造成に適したエリアを、初めて地図にまとめました。
主任研究員の仲野さんは「砂漠みたいに見渡す限り何もない場所で海藻を生やすのはすごく大変だが、まだ福井は海藻が残っているので、その藻場を核に横へ横へと広げていく活動ができる」と期待しています。また、「ブルーカーボン」の観点からも藻場の評価は世界的に高まっているとして「県民の皆さんにもに関心を持ってほしい。藻場を守り、豊かな海を次世代につないでいきたい」と意気込んでいます。